提供:大成建設株式会社 制作:横手経済新聞編集部
建設現場における担い手不足などを背景に、建設業の労働生産性の向上などを目的に国が進める革新的技術。現在、国土交通省の事業として、秋田県東成瀬村で行われる「成瀬ダム原石山採取工事」で、大成建設を中心としたコンソーシアムが試行する。
成瀬ダムで進められる取り組みについて、国土交通省東北地方整備局成瀬ダム工事事務所の村山英俊所長と、大成建設土木本部土木技術部ダム技術室の新井博之課長に話を聞いた(以下、敬称略)。
ドローン測量とクラウド活用を中心とした「4D工程管理システム」
――成瀬ダムで試行する「革新的技術」とはどのような技術でしょうか?
新井 今回は、管理技術面における生産性向上を目的に2つの技術を試行しています。
一つ目は、ドローン測量とクラウド活用を中心とした「4D工程管理システム」です。4D(Dimension)とは、3次元空間+時間要素を加えたものです。採石現場をドローンで撮影した映像で「3D出来形モデル」を作成し、クラウドにデータを送信するところまでを全自動化するものです。これにより、工程の進捗が「見える化」され、測量作業の生産性が向上します。これまでにも、ドローンの撮影や3D出来形モデルの作成など単体での試験運用は行われてきましたが、全ての自動化は初めての取り組みになります。一般に市販されるDJI社製ドローンを使うことで、汎用性の高い技術の確立を目指しています。
二つ目は、新たな材料判定技術導入と3D施工情報のクラウド共有です。これまでは、ダムの材料として採石する石の判別・検査は、現場で人の目で行ってきました。今回は、これを数値化することと、遠隔地カメラやクラウドを活用したデータ共有などを統合し、検査業務や現場の管理業務の生産性の向上に取り組みます。
これら二つの技術の試行が、国土交通省によって決定されたのは2018年9月末。現在、準備作業などを進めており、今春から本格的な試行を始めます。
DJI社製ドローン
――これらの革新的技術を現場で試行することによって、国土交通省が求めていることを教えてください。
村山 現場の立場からは、生産性向上がキーワードになっており、効率よく作業することでかける労力に対してより多くの成果を得ることが重要です。現在、国土交通省では「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を進めています。測量から設計、施工、検査、維持管理にいたる全ての事業プロセスにICTを導入することにより、建設生産システム全体の生産性向上を図ろうとする取り組みです。
これにより、受注者側が効率よく作業できるようになるほか、発注者側はクラウドの活用によるペーパーレス化や、遠隔地カメラによって現場に立会う回数を減らすことができるようになるなどのメリットが見込まれます。
現場ごとに条件が異なる土木の分野における技術は、実験室の中だけでなく、実際の現場で使えることが求められるわけですが、一般的な現場では、受注者側が開発中の技術をテストすることは難しいのが実情です。今回、実際の現場で試行できることは大きなポイントです。さらに、異分野の連携を通じた新しい価値の創出や、生産性の向上につなげられる機会になるものと期待しています。
成瀬ダム建設現場の様子(2018年10月)
――成瀬ダムの役割と地域への貢献について教えてください。
村山 2018年から本体の工事が始まった成瀬ダムは、2024年度中の完成を予定しています。洪水調節、流水の正常な機能維持、農業用水の補給、水道用水の供給、発電などダム本来の機能に加え、「ダムツーリズム」にも力を入れたいと考えています。
成瀬ダムの見学者数は、2017年には500人ほどでしたが、2018年には約1000人にまで倍増しています。建設中にしか見ることができない建設現場に多くの皆さまに足を運んでいただくため、個人で参加できる特別見学会や、ダムの効果を受益する下流の地域住民の皆さまを対象にした見学会の開催などを予定しています。現場に設けた展望台からは、毎日、工事現場の様子を見ていただくこともできます。
地域の皆さまに愛され、多くの人々に足を運んでいただけるダムを完成させることで、地域の振興につながるものと信じています。
建設現場見学会の様子(2018年)
――ありがとうございました