戦後の日本を代表する建築家・白井晟一が設計した湯沢市内の建造物2件を登録有形文化財に登録するよう、国の文化審議会が11月16日、文部科学相に答申した。
答申された建造物の一つは、酒造業各社が出資して1959(昭和34)年に建設された鉄筋コンクリート2階建ての集会施設「四同舎(しどうしゃ)」(湯沢市前森1)。鉄筋コンクリートを黒塗りの鋼板で包んだ柱と白タイル張りの壁、積雪に配慮した量感のある屋根に特徴があり、2階の会議場は柱や梁(はり)がコンクリート打ちっ放し、壁と天井はラワン材の堅羽目板張りの大空間となっている。
もう一つは、1953(昭和28)年、東京都世田谷区に建築され、2007年に湯沢市に移築された切妻造りの木造平屋建ての「顧空庵(こくうあん)」(湯ノ原1)。モルタルの上にしっくい仕上げの外壁で、効率的な平面計画と規格材の利用によりローコスト化を図りながら仕上げ材を選択し空間構成を工夫したことなどが特徴。
四同舎を管理する白井建築研究会の清水川隆さんは「地元の宝を残し、できればまちづくりにも生かしたいという思いで管理してきた。文化財への登録の話はうれしい。建物は鑑賞するだけではなく、使ってこそ価値がある。多くの市民の協力を得ながら、まちづくりに生かしていければ」と話す。
答申に基づき、近日中に行われる官報告示を経て正式に登録予定。
秋田県内に所在する登録有形文化財は現在192件。